『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』をネタバレなしで紹介！

原作者は燦々SUN（イラスト：ももこ）。シリーズ累計発行部数は500万部を突破^*1。

2020年から小説投稿サイト『小説家になろう』で短編として連載。初めは「相手に伝わっていないと思っている言語で優越感に浸る残念可愛いヒロイン」を異世界を舞台に書こうと考えたが、世界観や設定の説明が面倒だったこともあり、現実世界での恋愛に落ち着いたとのこと。

また、どこの国の言語にするのかを考えた際に、外国人の血を引いたヒロインにするなら日本人と全然違う容姿にしたいと思い、直感かつ妖精みたいな神秘的な美しさのイメージがあるという理由などからロシアが選ばれたそうです^*2。

ロシアでは親しい人を愛称で呼ぶ習慣がある――

容姿端麗でスポーツ万能、成績は学年トップの優等生。そんな彼女が普段と違う顔を見せるのは、隣の席でやる気を出さずにだらけている久世政近に対してだけ。

当たり強い日本語とは裏腹に甘々なロシア語を呟くヒロインと言語の意味がわかってしまう主人公の特別な関係を描く悶絶必至の学園ラブコメディ。

清廉潔白で近寄りがたく、感情を表に出さないような印象を持っていたけれど、思っていたよりも親しみを感じられるシーンが多く、すぐさまギャップの虜になりました。

角が取れたという感覚に近いでしょうか。ロシア語の発音も素人目にはとても綺麗でやわらかく、見た目以上に可愛らしさがあるキャラクターです。

会長と副会長のペアで立候補する決まり――

現在は会計を務めるアーリャと中等部では副会長に就いていた政近が手を取り合い、心の距離を縮めながら次代の生徒会長になることを目指してライバルとの候補者レースを戦うストーリー。

何でもないやり取りや困難に直面した際に垣間見える人間性が、登場人物たちの魅力とともに深みのある物語を形作っています。

二人の押しつ押されつの絶妙な掛け合いを悦楽としつつ、人としてどう成長するのかも楽しめる内容です。

一方で、方向性の違いとでも言いますか。堅く気詰まりな空気が流れれば流れるほど一時的とはいえ作品のコンセプトからは遠ざかってしまうため、求めるものとそぐわずに首をかしげる人もいるかもしれません。

見どころはキャラクターの可愛さに尽きる――

アーリャがロシア語を話すときは、厄介な相手に絡まれたときや恥ずかしい言葉を聞かれたくはないとき。

好きな人の名前をこっそり机や窓に書くみたいに、本来は秘めるべき本心が表面に出てしまっているという無防備な姿がたまらなく愛らしい。「ツンデレ」や「クーデレ」が好きなら非常におすすめだと思います。

得意げな顔も怪訝けげんそうな顔も表情の変化が多彩で、単調になりやすいジャンルにおいて飽きさせない工夫が感じとれます。

実は放送時期は一度延期しており、品質の向上にこだわった丁寧な画作りにより透明感ある綺麗な仕上がりになっています^*4。まさしくアニメーションとしての魅力が上乗せされた作品といえます。