『落第騎士の英雄譚』をネタバレなしで紹介！

原作者は海空りく（イラスト：をん）。累計発行部数は150万部を突破^*1。

本作の走りは異能バトルのスポーツものだったという。2013年の刊行開始から10年で完結を迎えたなかで、19巻のエンディングは初期の構想にはなかったらしく、長期シリーズになったことで自分のやりたいことが変化したり、キャラクターが勝手に動いたりとライブ感で執筆を続ける苦労があったと語られています^*2。

また、物語が進むにつれて英雄譚に近いものに方向性は変化していったわけだが、なぜスポーツ形式を選択したのかについては「タイマン勝負が読むのも書くのも好き」だと好きな作品の『はじめの一歩』を一つの例に挙げて話されており、自身の好きと得意を形にした結果『落第騎士』が形作られていったようです^*2。

己の魂を魔剣に変えて戦う現代の魔法使い――

異能の力を操る特異存在・伐刀者ブレイザーが集う破軍学園は、国際魔導騎士連盟の認可を受けた魔導騎士を輩出する日本随一の実績を誇る騎士養成学校。

全７校合同で主催される武の祭典・七星剣武祭を目指す若き才能たちが、誇りと信念を胸に、学生最強の座をかけてしのぎを削る学園ソードファンタジー。

黒鉄一輝もまた魔導騎士になるべく在籍しているが、学校の定める基準を満たしていないことで一度留年をしているまさに落第騎士だった。

「努力は天才を超える」。無能と評された主人公が磨き上げてきた剣技と不撓不屈の心で強敵と渡り合い、数ある理不尽を切り伏せて高みへとのぼっていく過程が描かれています。

主人公は不遇なだけで決して弱いわけではない――

最弱と書いて最強と読む。設定は違えど異世界転生が流行る前はこのようなジャンルが乱立していました。

学園能力者バトル、決闘、ツンデレ系ヒロインなど、典型的なライトノベルらしさを感じられると同時に、似た展開に既視感を覚えたという視聴者も多かったことでしょう。

しかし、本気には本気で、誠意には誠意で答える潔く真摯的なキャラクター性や爽快な戦闘シーンの数々、主人公とヒロインの気持ちの良い関係性と評価できる部分も多く、見慣れた頃に気付く面白さがあります。

全体的にツッコミたくなる場面こそあるもののそれが嫌いになれない「観ていて楽しいが勝る」内容です。

「僕の最弱さいきょうを以て、君の最強を打ち破る！」――

全身全霊の戦闘スタイルから繰り出される諸刃の剣で、下馬評の悉ことごとくを覆していく王道のストーリー展開。

専門用語の説明は簡易的だと言わざるを得ないですが、かわりにテンポがいいのでサクサク進められます。むしろ、はっきりと見せたいところにリソースを割いている印象を受けました。

主にアクションまわりの質が高く、細かい所作にまで行き届いた疾走感のある剣戟が一番の見どころです。

大人になると恥ずかしくなるセリフをかっこいいと思わせてくれる演出を含めたさまざまな工夫によって、いわゆるテンプレ作品の一つに数えられながらも埋もれることのない「見れる」仕上がりになっています。