『彼方のアストラ』をネタバレなしで紹介！

原作者は篠原健太。代表作は1400万部の人気漫画『SKET DANCE』。

次はバトルものを描くと決めたものの「どうやって戦うかは考えたが何と戦うかの設定が作れなかった」と１年間進めた企画を断念。そこから、自然と対峙して困難と戦うという形ならやれるのではないかと考え、宇宙を舞台に冒険をする本作の骨格が出来上がっていったようです^*1。

影響を受けたものには『十五少年漂流記』『インターステラー』『ゼロ・グラビティ』を挙げられている。特に、着想の元である『宇宙船製造法』の藤子・Ｆ・不二雄の作品が原点にあるとし^*2、人気シリーズではドラえもんの『のび太の宇宙開拓史』が一番好きで、思いきり影響を受けたと語られています^*3。

宇宙に行くことが当たり前になった近未来――

惑星キャンプの最中に予想外の出来事が発生し、宇宙空間を漂流することになってしまった少年少女たちの波乱に満ちた生き様を描くSFサバイバル冒険譚。

押し寄せる不安と拭えない疑念を抱えながらも仲間たちと手を取り合って故郷への帰還を目指す。友情あり感動ありのスぺクタクルストーリーです。

キービジュアルに船らしき物が写っていますが、ロボットや戦争ものではないので苦手な人ならご安心を。

生活物資を揃えるための探索パートが多くを占めており、初めて目にする生き物や植物、惑星ごとに異なる生態系はまるで小さい頃に夢見た未知の世界そのもので、少年漫画らしい胸が躍る世界観になっています。

次第に明らかになっていく登場人物の過去――

失敗した経験、家族との軋轢あつれき、それらから形成される性格や価値観の違い。アイデンティティに関連付けたエピソードとストーリー全体を引き立たせるキャラクターの造形の上手さには確かな技量がうかがえます。

行動原理が明確なことで感情移入もしやすく、彼らの精神的な成長と変化にも注目して観ていってほしい。

ただ一つ問題点があるとすればギャグシーンでしょうか。強がっていたり、気丈に振舞っていたりするのはわかっていても状況を考えると似つかわしくないと感じる場合もあります。

一方で、息が詰まる陰鬱とした空気が続かないおかげで視聴に抵抗感はなく、緊張と緩和のバランスとしていいのではないかと思います。

終盤に差し掛かる頃にはもう目が離せない――

序盤から伏線を張っている感覚はあるのにあまりにも自然で気が付かない。本当の意味で伏線が伏線として成立しており、事実が判明したときの驚きと高揚感は今も忘れられません。

作画や演技はもちろんのこと、思考中の死角をつかれたようなゾクゾク感がこみ上げてくるシナリオ構成と演出の良さが際立っています。

こういった類のものは専門用語が多くて難しくなりがちだけれど、程よいSF設定にミステリーや恋愛という要素を絡めたわかりやすい面白さが魅力です。

登場人物と同様に翻弄されていき、最後は余韻にも浸れる。少ない話数にもかかわらず満足度が高いため、一クールで楽しみたい人には特におすすめしたい作品です。