『ハナヤマタ』をネタバレなしで紹介！

原作者は浜弓場双。

2011年から『まんがタイムきららフォワード』にて連載を開始。当雑誌は４コマ誌ではなくストーリー誌で物語を意識したシリアスな展開が見られますが「もっと女の子だけのきゃっきゃうふふな話が描きたい^*1」と述べられているように、登場人物の距離感が近く、仲睦まじい日常シーンもしっかりと描かれています。

アニメ化するにあたってはスタッフがたまたま購入した号のカラーイラストの絵が可愛く、凄く綺麗な話でフィルムとして賑やかな作品になると感じて企画が始まったようです。

作中の踊りの振付については全国のよさこいを手掛ける『天空しなと屋』が担当されています^*2。

咲かせましょう、花のように――

由比浜学園中学に通う５人の少女たちが「よさこい」という日本発祥の伝統的な踊りを通じて友情を育み、自分自身を見つめ直しながら成長していく青春グラフィティ。

それぞれのキャラクターに焦点を当てつつ、目標をもって挑戦することや仲間と支え合うことの大切さを描いています。

また、物語に彩りを添えているのが趣のある背景と音楽です。全体を包み込むようなやわらかな色彩からは期待と不安で揺れる繊細さと一瞬一瞬の儚さが感じられます。

絢爛けんらん華麗な衣装と踊り、心地よく響く鳴子。作中の節々に見られる「和」が美しく、視覚的かつ聴覚的にも楽しませてくれる作品に仕上がっています。

誰だって本気なら変わることができる――

自信が持てない内気な主人公がハツラツとした転校生との出会いをきっかけに「よさこい」に興味を持ち、ステージに立つことを夢みて自らの殻を破っていくという王道的なストーリー。

思春期の心の変化や悩みが心理描写として丁寧に表現されており、深みと共感が増すことで得られた達成感と感動はひとしおでした。

その分、シリアスなシーンが多くなってしまいますが、雨降って地固まるともいうように本音でぶつかってお互いを理解し、絆を深めていく様子は作品の纏う雰囲気も相まり、実に温かな気持ちで見ていられます。

日常ものというよりは部活ものといった内容ですので、癒しのみを求める人には合わないかもしれません。

題材よりもそれに取り組む女の子がメイン――

本作の見どころを挙げるならやはり踊りのシーンでしょう。当然ながら原作の漫画では絵だけだったものに動きと音楽が付くわけですからアニメの見映えは抜群です。

ただし「よさこい」が伝わったかと言われるとそうとは言えません。あくまで彼女たちの魅力を前面に押し出した作品と解釈したほうがしっくりきます。

序盤こそ盛り上がりに欠けるものの、終盤にはしっかりと盛り上がる気持ちの良い構成になっているため、少しでも惹かれる部分があったならば最後まで観てみる価値は大いにあると思います。

完結までは描かれていないけれど収まりがいいことから、１クール程度でまとまったものが観たい人には非常におすすめです。