『転生したらスライムだった件』をネタバレなしで紹介！

シリーズ累計発行部数は4000万部を突破^*1。

2013年から『小説家になろう』に投稿され、内容を加筆・修正した改訂版がGCノベルズから刊行された。

原作者の伏瀬は元々練習のつもりで書いていたらしく、週刊少年ジャンプのものや同じく投稿サイトに掲載されていた『オーバーロード』に影響を受けたと発言されています^*2。

2015年には約１億4000万PVを記録している^*3。その後、メディアミックスとして川上泰樹の漫画版が連載を開始し、それを原作とするテレビアニメ化が決定した。

初の劇場版作品では国内動員数100万人、興業収入は14億円を記録しました。

生まれ変わったらスライムになっていた――

日本人サラリーマンが魔物に転生する異世界ファンタジー。スライムの意外性と絵本を思わせるやわらかな風景とが相まり、ユニークな世界観が形づくられています。

前世の記憶と性格を引き継いでいる割に未練や願望などはなく、心の赴くままに行動する身軽さは見ていて気持ちがいいです。

生物としては無性で声は中性的な少し女性寄り。愛くるしい風貌になったおかげか、初めはちらつくこともあった前世の年齢については途中から気にならなくなっていました。

また、見た目は人間の姿を使い分けるので、ずっとスライムの形態で強くなっていくわけではありません。

人間、亜人、魔物がいる自然界を生きる――

本作のスライムもまた最低位の魔物です。だからこそ際立つのは主人公の驚異的で得体の知れない特異性。倒した敵や周囲のあらゆるものを取り込むことでスキルを獲得していきます。

多種多様な種族との出会いと数多の戦闘を経て、転生者としてこの世界の在り方を知っていくストーリーになっています。

その過程において次第に増える仲間たち、住宅を建造したり街道を整備したりといったまちづくりの計画。

リーダーとして試される手腕のほどは戦闘以外の要素として一つの見どころでしょう。やがて、周辺国家が無視できない勢力へと発展を遂げる様はなかなかに面白い。

最低位の魔物がどこまで上り詰めるのか――

飛躍的な進化の前には向かうところ敵なし。想定外すぎる強さで真っ向から打ち倒す姿は実に爽快であり、主人公最強系が好きな人にはおすすめしたい内容です。

ただし、バトルの描写は単調と言わざるを得なく、すぐに決着してしまうのも合わせると盛り上がりに欠ける印象はありました。

物事が淡々と進んでいくため、組織構成や対立関係などの情勢の変化を楽しめない場合は少し物足りないと感じてしまうかもしれません。

そのかわり、シンプルにまとまっていることから、子どもから大人まで年齢を問わず見られる作品だと思います。