『ワールドトリガー』をネタバレなしで紹介！

原作者は葦原大介。累計発行部数は1500万部を突破。

勝負ものを描こうと考えたときに担当者の助言を受け、既存の競技ではなく一からルールを考える方向性に変えた結果、SFバトルものに帰着した。ストーリーよりもキャラクターを先に考えられており、構想の段階で３桁に及ぶ人数の名前や性格などを作成されていたそうです^*1。

これらの緻密に作りこまれた設定が多くのファンを魅了し、作者の体調悪化に伴う長期間の休載^*2を経ても衰えることなく根強い人気を保っています。

2018年には復帰を果たし、現在は月刊誌『ジャンプSQ. 』にて連載中です。

４人のキャラクターを軸に物語が展開する――

舞台は突然現れた侵略者によって甚大な被害となった三門市。いつ攻めて来るかわからない災害級の脅威とそれに対抗する防衛組織の攻防を戦略的に描いたSFバトルアクションです。

難しそうな印象を受けますが、過激や陰鬱とした描写、堅苦しさはなく、想像しやすい言葉選びがされていて年齢を問わずに楽しめます。

問題点があるとすれば、面白さに気付けるかどうかでしょう。ストーリーの起伏が少なく進みも遅いため、画としては盛り上がりに欠けると言わざるを得ません。

ゲームでいうところのチュートリアル部分が長く、基本の設定、組織図や関係性、敵対勢力が出揃ってからが本番といえます。

組織に所属する隊員は基本的にチームを組む――

適正や役割に応じて攻撃手アタッカー・銃手ガンナー・狙撃手スナイパーなどに分けられ、あらかじめ決められた枠に武器やオプションを入れて自由に装備を組み合わせて戦います。万能にするか、特化にするか。性格や熟練度からも見えてくる各キャラクターごとの特徴、基礎から応用までをおさえた「拡張性の高さ」は目を見張るものがあります。

そして、右に出る者はいないと言っても過言ではないのが、大人数を同時に動かす卓越した集団戦の技量。今まで見ていたものは集団戦という名の個人戦でしかなかったのかと思ってしまうくらいの完成度でした。

組織の戦略、チームの戦術、個々の戦法が臨機応変に飛び交う戦闘シーンは見どころが満載です。

味方は頼もしき仲間であり競い合うライバル――

戦力を底上げするために定期的にチーム対抗戦が行われ、上位のランクを目指してしのぎを削っています。

地形の理解と射線の意識、情報の把握に加えて天候の変化や漁夫の利など、刻一刻と戦況が変わる流れはさながらFPSゲームのような面白さがあります。

総じて「個の力」よりも「全の力」と表現できるくらい、全員に見せ場がありバランスのとれた作品です。

弱いキャラクターが急激に強くなることはなく、強いキャラクターに対して太刀打ちできないこともない。派手さという意味の爽快感はないけれどじっくり楽しみたい人にはおすすめだと思います。